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第1回 グランフォンド ベルヴェデーレ

1st Granfondo Belvedere
2006年9月17日(日)

「コースと景色は、十分に楽しめる(苦しめる)ので、期待してください。」
グランフォンドベルヴェデーレをプロデュースし、大会の主催もされたビチスポーツモリアイの盛合さんからこのようなメールをもらっていました。コースの距離は145キロ、累計標高差2650m。私は、この数字がどのような意味なのか、まったくわかっていませんでした。
また、コースの要所となる地名を覚えなくては、と地図を見ていたら、大会設定の「第1関門は11:00までに通過」という条件も自分にとってはあまり余裕ないことに気がつきました…。


前日、降水確率80%だった天気予報に反して、大会当日の朝には雨があがりました。スタート・ゴール会場となる「リバーパーク新里」の受付に参加者が集まってきます。競技性を排除したグランフォンドとはいえ参加者はレーシング派の方々です。
開会式では、盛合さんがグランフォンドへの思いと大会開催の経緯を話され、私たち参加者は「何事もなく無事にここへ戻る」ということを強く思いました。
グランフォンド、メディオフォンド合わせて46人の参加者が4組に分けて3分おきに時間差スタート、合図は盛合さんのお嬢さんの笛です。皆が和やかにスタートして行きます。
私は、第2班でスタートしました。

まずはやや緩やかな登りの国道340号を走り12キロほどで右折。この分岐点では村の人やスタッフの方々の応援があり、気持ちが高ぶります。道路脇には、緑色の栗が落ちていたり、田んぼの稲穂が首を垂らしていたり、秋がすでに始まっているんだーと感じられます。そう思う余裕があったのもここまで、激しい山岳コースが始まりました。登っても登っても先に見える道は登りです。この辺りから後からスタートした方々にどんどん抜かれていきます。

「ウェブ見ていますよ!」と声が掛かりましたが、
「ありがとうございますっ!」というのが精一杯。
私のバイクはコンパクトクランクでフロント34、リア27を選択しているのに、頑張っても足が思うように回りません。登っても登っても、まだ登りが続きます。しばらくして傾斜が緩くなったのでもう終わりだろうと思ってウィンドブレーカーの前チャックを締めましたが、まだ登りは続きました。

ようやく10キロ以上の長いきつい登りが終わると、下りも延々と続きます。
路面はすでに渇いて、ときより薄陽が差してきました。
気温は、18度くらいです。

10キロほど下って、ようやく最初の補給所に辿り着きました。
スタートからまだ30キロほどしか走っていないのに、登りの連続で身体は消耗してお腹がすいていました。補給所には食料も水分も十分にあり、近くの村の人たちも縁側にでて応援してくれ、すっかり和みます。
しかし、ここで時計を気にせず補給していたのが今から思うと悔やまれます。

そこから第1チェックポイントまでの12キロも、ほとんど下り、信号もなく気持ちよく下ります。周りの景色が目に入り、とうもろこしの収穫をしている様子が見えました。折り返しとなるその区間では、唯一、参加者と顔を合わせる機会となりお互いに自然に手を挙げあいさつしました。
チェックポイントで背中につけたゼッケンに通過の印の「がんばれスタンプ」を押してもらい、気持ちよく下ってきた道を今度は折り返し登ります。
その後もすれ違う参加者やスタッフの車と気持ちよく挨拶を交わしていましたが、よく見るとそれが最後尾の「回収車」であることに気づき、自分がかなり遅いと知る事となりました。
時計を見ると10:50!第1関門の11:00にあと10分しかなく、どう頑張ってももう間に合いません。
11:20ごろに補給所に辿り着き、コース変更、メディオフォンドコースに入るよう指示がありました。
ちょっと残念でしたが近所の方の差し入れをいただきながら一旦休憩し出発しました。

また激しい登りが続きます。
途中、畑仕事しているおばあさんに
「あんた〜、久すぶり〜。話すしとでんせ〜。(話しに上がりなさ〜い)」
と声を掛けられたました。

メディオフォンド第2チェックポイントにて「おめでとうスタンプ」が押されて
「あと、もう少しで下るだけ」と聞きました。ちょっと安心してペダルを踏み進むと、そんなことはなく、ずーーーっと登りが続きました。
だいぶ足にもきていて、私にはメディオフォンドコースで十分なんだと思いながらひたすら登りました。ひいひいと時速1桁で登っていると、「峠はもう少しだよ」とスイーっと抜いていくのは、グランフォンドコースからの先頭者!でした。私よりも40キロも余計に走ってきているはずなのに!?
後にも先にもグランフォンドから抜かされた方は、この方だけでしたが、なんと本場イタリアのグランフォンドも経験されている方だとゴール後に知りました。しかしながら、峠の頂上はまだ先でした。

「速いぞ〜!!」「行け、行け〜っ!!」と新里放牧場で作業をしているおじさん達から掛け声がかかります。久々に人を見たという感じです。それまでしばらく前後左右、人っこ一人見当たらず、車も信号も広告看板もない中、とてつもなく長い時間をひとりで登っているようだったからです。登りの疲労と孤独感から一気に開放され元気づけられ、気を取り直して最後の登りに挑みます。やっとの思いで山頂に辿り着くと、そこには草原が広がり牛の群れが目に入ってきます。さらに向こう側には宮古港と太平洋を見ることができました。

ひたすら登り続けた後にかけていただいた激励の掛け声、出会った雄大な眺め、そしてその後の長い下りは、がんばった自分へのご褒美です。
今まで自転車を乗り続けてきて本当によかったと思いました。

再び国道340号に辿り着き、残り6キロを全力で走ります。
ゴールでは、スタッフの皆さんが暖かく迎えてくれました。
無事に辿り着き、ホッとしてお腹がすきました。

「本気で遊ぶことに集中できる環境」 なんて贅沢なサイクリングと思いました。大会中、スタッフのみなさんが私達を見守って下さっていたことがわかります。先頭と最後尾には車がつき、曲がる箇所にはすべて方向を示す矢印の表示がありました。また、下りで道幅が狭いところには「ブレーキ注意」、要所には「サイクリングイベント開催中。ご注意ください」というたて看板があり、参加者だけでなく、一般の道路使用者にも配慮がされていました。太い鉄工の排水口には、すべらないよう敷物がありスタッフの方も見守ってくださっていました。コースを練習に走っている盛合さんだからこその行き届いた気遣いもありました。準備には砂利がないように掃いたり、12キロも草取りをしたと聞き、手作りで暖かな大会をしていただきいたスタッフのみなさんに感謝です。

宮古駅をまたいでいる三陸鉄道のリアス線は、海岸線を走ることで知られています。電車に乗ってみると海岸の景色を見るよりトンネルが多いように思えるのは、それほど山に囲まれ起伏が激しい地形だからのようです。実際自転車で走ってみて宮古周辺が山深いことが改めてわかりました。
登山で山を降ると違和感があるように、大会が終わり登りでもなく下りでもない平坦な道を走るのは、なんだかつまらなく感じました。
あんなにも長く苦しかった登りが恋しくなっているのです。普段の練習は、平坦な道と信号で、かなり休んでいたことがわかり、次回は、グランフォンドを時間内に完走できるよう、もっともっと練習したいと思います。

>> 大会写真は公式ホームページよりご覧いただけます。